天草町高浜地区で見つけた小さな磁器の看板。「Porcelain」という素朴な藍の文字に惹かれて小径を進んでいくと、木立のなかから小さな煙突が顔をのぞかせます。
「天草創磁 久窯」。窯主の江浦久志さんは高浜生まれ、高浜育ち。天草陶石を採掘する会社に勤める父の影響で、幼い頃から陶石の存在は知っていたものの、その価値に気づき始めたのはずっと後だったといいます。卒業後、焼き物の町として知られる伊万里で磁器を学び、有田で上絵や染め付けを、福岡県の小石原で陶器の技術を身につけた江浦さん。27歳で帰郷し地元の陶石会社に勤務したのち1989年、この地に小さな窯を構えました。以来、貫くのは陶石、陶土、釉薬など、天草の原料だけを使うということ。
「地元びいきというわけではないけれど、これほど素晴らしい原料があるのか! と、仕事をしていてつくづく思います。天草陶石を微粉砕して土にして焼けば、磁器になるんです。粘りが強いから、他のものを混ぜなくても焼きくずれず、手でひいても薄く仕上げられる。そんな石、世界中探したってないでしょう?」
希少な天草陶石の産地で窯を開いているからこそ、できることがあるのではないか。そんな思いから、江浦さんは等級の違う天草陶石を用途に応じて使いわけ、それぞれの持ち味を生かした器を手がけます。江戸時代の焼きもののような素朴な風情を出すときは「3等石」。絵付けや染付を施すときは、純白よりも青みがかった白のほうがなじみがよくなるため、少し鉄分を含む「2等石」を。純度の高い「特等石」は濁りのない白も引き出せますが、あえて特殊な焼き方でアイボリー系のやわらかな色味に仕上げるのが江浦さん流です。
「普通じゃ考えられないかもしれませんが、こういう贅沢をできるのが陶石の産地・天草で焼き物をやることの魅力。釉薬には木灰のほかに天草陶石を使うこともありますが、つや消しのマットな質感が気に入っています。天草でしか出せない色を、これからも大切にしたいですね」。
天草創磁 久窯(ひさしがま)
電話番号 | (0969)42ー0287 |
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住所 | 天草市天草町高浜南2904 |
営業時間 | 9時~17時 |
店休日 | 不定(来店時は必ず電話を) |