ふと波音が恋しくなり、天草西海岸へ。下田温泉からサンセットラインを南下すること約15分、かつて天草陶石の積み出し港だった小さな入江に「天草唐津 十朗窯」はありました。

ここで作陶を続けるのは、唐津で修行を重ねた亀山郷さん(東京出身)と、有田で窯業を学んだサ苗さん(天草出身)。ルーツの異なる夫婦ユニットによって生まれる器は、大胆で繊細で、オーソドックスで規格外。作風の幅が無限に広がるのは、1日として同じ風景を見せることのない大自然のなかに身を置いているからかもしれません。

ろくろによる成形と釉薬づくりは主に郷さんが担当。郷さんお手製のみかん釉をかけた器は、向付や菓子器などに用いられるほか、縁起のいい贈り物としても人気です。刷毛目や蛇蝎釉といったさまざまな手法を生かした器は、和のしつらいを引き立てるものばかり。

郷さんが成形した器に、サ苗さんが絵付けを施すとその印象はがらりと変わります。白磁にコバルトで絵付けを施す染付皿は、表情豊かな人物画や静物画、抽象的なモチーフなど絵柄もさまざま。取り皿や盛り皿など用途に応じて使い分けを楽しめるため、絵皿を揃える料理人も多いといいます。

﨑津教会そばの寿司店
珍魚に出会えるかも!?

﨑津集落のなかにある寿司店「海月(くらげ)」の大将・宮下剛さんも、十朗窯の器を味方につけるひとりです。海を眺めるカウンター席には「十朗窯」の長角皿が。繊細な手仕事の光る一貫が差し出されると、たちまちここが舞台に変わります。

「十朗窯の器は個性もあるけど、使い勝手がとてもいい。お客様のなかには、食後に窯元へ行ってみたいとおっしゃる方も多いんですよ。天草はいろんな作家さんがいるから、料理人としてもやりがいを感じます」と宮下さん。休日は夫婦で窯めぐりを楽しむこともあるそうで、天草の窯元談義に花を咲かせるのもいいでしょう。

天草唐津 十朗窯

電話番号 (0969)42ー3143
住所 天草市天草町下田南426ー2
営業時間 10時~17時
店休日 不定

海月(くらげ)

電話番号 (0969)79ー0051
住所 天草市河浦町﨑津457
営業時間 12時~14時
店休日 なし