レンガづくりの煙突に、タイルで刻まれた「水の平焼」の文字。工房の周りにはたくさんの素焼きが並べられていました。
「水の平焼」は天草でも二番目に歴史が古く、その伝統が一時も途絶えることなく続いているという意味でも貴重。陶石だけでなく、古くから近くでとれる赤土を合わせて使う水の平焼の器は、陶器と磁器の両方の魅力をあわせもちます。
水の平焼の名前が全国に知られるようになったのは明治中期、五代目によって開発された赤海鼠釉(あかなまこゆう)がきっかけでした。灰色や漆黒、茶色などさまざまな色が混じり合った独特な輝き。2種類の釉薬をかけて高温焼成することで生まれる模様は、それはそれは神秘的です。伝統技法を受け継ぐのが、7代目の岡部信行さんと息子で8代目の祐一さん。
「水の平焼は代々、挑戦を続ける窯なのかもしれません。伝統はただ、守ればいいというものでもない。これからも守り継ぐべき点と変えるべき点を見極めながら、水の平焼の歴史をつないできたいと思います」とは祐一さんの言葉です。
器峰窯の新しい風
白磁とミニチュア
ところで、水の平焼では近年、新たな作風が吹き始めました。岡部俊郎さんは「水の平焼 器峰窯(きぼうがま)」という名で、天草陶石の風合いを生かした白磁の器を手がけているのです。妻・綾子さんがモダンな絵付けをほどこす染付磁器は、小皿や箸置きなどのほか、アクセサリーも。俊郎さんは言います。「今までは生活の器がほとんどでしたが、ミニチュアを作るようになって商品のジャンルも広がりました。これからもお客様の要望を聞きながら、いろんな挑戦をつづけていきたい」。
そんな俊郎さんの遊び心に魅せられたのが、全国へ向けた天草食材の流通・販促に努めるフードアドバイザーの松田悠佑さん。2016年、自身のフレンチ店「Picasso」をオープンさせるにあたり、オリジナルの器をオーダーしました。階段やテーブル、イスなどを多用した独創的な盛り付けは、俊郎さんの器があればこそ。天草各地の生産者から届く季節食材が、今日も美味しい一皿になりました。
水の平焼
電話番号 | (0969)22ー2440 |
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住所 | 天草市本渡町本戸馬場2004 |
営業時間 | 9時~18時 |
店休日 | なし |
シャルキュティエ Picasso
電話番号 | (0969)66ー9595 |
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住所 | 天草市南新町3ー8 |
営業時間 | 18時30分~24時(OS23時30分) |
店休日 | 木曜 |
ホームページ | http://picasso2014.com |