「丸尾焼」の窯元に併設されたギャラリーは、器のセレクトショップのような品揃え。その多彩ぶりに、さぞや多くの作家たちがそれぞれの個性を生かした作陶を行っているのかと思いきや、分業制が基本だそう。土づくりからろくろ、仕上げの成形、釉薬に絵付け、さらには販売まで、器作りにまつわる多くの工程を分業することで作品のクオリティが高まり、同時に若手陶芸家の育成にもつながるのだといいます。

島内外に多くの陶芸家を輩出してきた「丸尾焼」で最近、注目を集めているのが五代目当主の息子、金澤佑哉さん・宏紀さん・尚宜さん兄弟です。メタリックな風合いのものや、質感の違いで魅了する白磁など、独自の感性で生まれる作品は、県内外に多くのファンを有します。

熊本地震後、様変わりした食卓を取り戻すきっかけとして開催された「丸尾三兄弟 〇O(マルオ)の食卓」展(熊本市現代美術館)は、三兄弟の器と引き換えに器の使用写真を募るというもので、アートを用いた課題解決型のプロジェクトとしてグッドデザイン賞を受賞。日をおうごとにギャラリーがみずみずしい食卓の写真で埋め尽くされる様子は、〝日用の器〟のちからを感じさせるものでした。三兄弟がつくる未来から、目が離せません。

海辺のカフェには器使いのヒントが満載

自家焙煎のコーヒーを目当てに、大矢野島の「麻こころ茶屋」へ。天草在住の陶芸家・木ユウコ(しげゆうこ)さんのカップが、繊細なラテアートを引き立てます。焼きあがったばかりのグラノーラを少しだけ取り分けてもらうと、ザクザクっとした食感と際立つナッツの香ばしさに驚きました。良質な素材を生かしたスイーツや、天草の海や山の食材を使った一皿、自家製保存食などを手がける同店。居心地とおいしい一皿を求めて訪れる常連客のなかには、木ユウコさんや丸尾焼の金澤宏紀さん、蔵々窯の許斐良助さんといった陶芸家の姿も。

「好きなものを見つけては買い足すので、窯元や作家もいろいろですが、手触りや使い心地も楽しんでもらえたらうれしいですね」と語る小澤さん。料理からスタイリングまで手がけたレシピ本の出版など、センスにも定評がある小澤さん夫妻だけに、日常に生かせる器使いのヒントもいっぱいです。

丸尾焼

電話番号 (0969)23ー9522
住所 天草市北原町3ー10
営業時間 10時~18時30分
店休日 なし
ホームページ http://www.maruoyaki.com

麻こころ茶屋

住所 上天草市大矢野町上6586ー3
営業時間 11時~17時
店休日 不定期営業(事前にHPでご確認ください)
ホームページ http://www.macocorochaya.life